暮らしの中で、香りってどこか後回しにされがちな気がする。
家具や照明、食器は目に見えるし、こだわってる人も多い。
でも香りは、あるかないかで空気の印象が大きく変わるものだと思っている。
僕が香りを意識するようになったのは、ある日ふと、
玄関を開けた瞬間の空気が何もないように感じたのがきっかけだった。
生活感とも違う、ただの無音みたいな空気。
整ってるけど、どこか素っ気ない部屋だった。
そこからリードディフューザーを置いてみた。
最初に使ったのは、APFRのホワイトティー。
ほんのり甘くて、でもくどくない香り。
疲れて帰ってきたとき、鼻先にふっと抜けるその空気だけで、少し呼吸が深くなった。
香りがあることで、部屋に自分の気配が残っているような感覚になったのも大きかった。
なんでも整えて無機質にするよりも、すこし人間くさい空気がある方が落ち着く気がする。
香りがあると、空間の輪郭がやわらかくなる
香りって、人の緊張をゆるめてくれる。
たとえばホームパーティーで誰かを迎えるとき。
はじめまして同士が混ざるときでも、ほんのり香りが漂っているだけで、場のテンションが自然と落ち着く。
もちろん主張が強すぎるのは避けたい。
あくまで空気の中に溶け込んでいて、意識すれば気づくくらいがちょうどいい。
僕がよく使うのは、アポテーケ、SHOLAYERED、あとはお香ならhibi。
全部、匂わせすぎないことを基準に選んでいる。
誰かに褒められたくて置いているわけじゃないけど、
来た人がなんか落ち着くねと言ってくれたとき、
それが香りの力だとしたら、ちょっと嬉しくなる。
香りには、言葉にできない印象がある。
空間の背景音みたいなものだと思っている。
最近は、玄関とリビングで香りを変えるようにもしている。
部屋に流れが生まれて、ただ整っているだけじゃない、ちょっとした表情がつくれる気がしている。
気温や湿度によって香りの広がり方も変わるから、
季節ごとに香りを変えてみるのも、ちょっとした楽しみになっている。
ふと香った瞬間に、季節の記憶がよみがえることもある。
香りは気分のスイッチでもある
香りって、自分自身のコンディションにも効いてくる。
僕の場合、朝に軽くユーカリ系のルームスプレーを使うと、頭がスッとする。
逆に夜は、甘さの少ないウッディ系や、火を使わないインセンスを選ぶ。
特別な香りじゃなくてもいい。
たとえばコーヒーを淹れたときの香りとか、洗い立てのタオルの匂いとか。
生活の中にあるささやかな香りが、自分の感情にふっと作用する瞬間がある。
音楽や照明と同じように、香りにもリズムがある。
それをうまく使えると、暮らしの輪郭がはっきりしてくる。
なんでもない部屋に自分らしさが加わる。
そういう香りがある暮らしは、思っていた以上に豊かだった。
